コーヒーを選ぶとき「ナチュラル」「ウォッシュド」「ハニー」なんて書いてあるのを見ることがあると思います。
これはコーヒーの果実から、種子であるコーヒー豆を取り出す方法のことです。
ネットを見渡すと、これらに関する詳しい解説はいくつも存在しているのですが、工程自体が複雑なので、説明されてもいまいちピンと来ないし、すぐ忘れてしまいがちです。
そこで本記事では、図解を使いながら、すんなり分かりやすく、頭に残る解説をしてみようと思います。
精製とは
はじめに、そもそも精製とは何なのかを、簡単に書きましょう。
コーヒー豆は、図のような作りになっています。
この状態から果肉・ミューシレージ・パーチメントを取り除き、コーヒー豆を取り出す作業が精製です。
ウォッシュド
- 果肉を機械で取り除く(パルピング)
- 発酵槽と呼ばれるプールで、ミューシレージを溶かして取り除く(水洗)
- パーチメント付きの豆を、天日や機械で乾燥させる
- パーチメントを機械で取り除く(脱穀)
という工程を踏むものがウォッシュドです。
後述するナチュラルと比較すると、加工途中で、異常のある実を発見しやすくなっています。
- 機械で皮が剥けない、未熟な果実
- 水洗の過程で水に浮くもの(虫食いで中身が少ないため、軽い)
- パーチメントの状態でカビなどの異常が見て取れるもの
こういった欠点豆を取り除く「選別」の作業が各工程で可能なため、不良の少ない、高品質なロットを生産しやすいです。
そのため一般的にウォッシュドの豆はナチュラルよりも高値で取引されます。(特に低価格帯で顕著。逆にスペシャルティコーヒーになってくると「ナチュラルならではの味わい」が付加価値になったりするので、ウォッシュドだから高いというわけでもなくなります)
デメリットとしては、水を大量に使うため、水資源の確保できる土地でしか導入できないこと、汚水を排出するために環境負荷が高いこと、比較的大きな設備投資が必要になること、などが挙げられます。
味わいは、クリーンでスッキリとした風味になる傾向があります。
ナチュラル
もっとも基本的というか原始的というか、シンプルな方法がナチュラルです。
収穫した果実を、そのまま天日や乾燥機などで乾燥させた後に、脱穀して種子を取り出すという方法です。
アンウォッシュド・非水洗式などと呼ぶこともありますが、なんだか字面から汚そうに見えてしまうので、コーヒーショップなどで売るときにはたいていナチュラルと呼んでいますね。
一見簡単そうに見えますが、乾燥時間が長く掛かります。
そのため、広い天日干しスペースを確保できる作業場でしか実施できない、雨の多い地域では実施できない、という面もあります。
またウォッシュドで実施するような選別が難しいので、欠点豆が混ざりやすく、価格が低くなりやすいです。(買ってからハンドピックで欠点豆を取り除いた結果、1~2割減ってしまうという場合もアリ。ロースターが割安で買えるというわけじゃないです)
味わいは、豆の個性がハッキリ出る傾向です。
ブラジル・エチオピア・イエメンといった産地ではナチュラルでの生産が多いです。これ覚えておくと便利です。
ハニー(パルプドナチュラル)
ウォッシュドとナチュラルの中間の精製方法がハニー(パルプドナチュラル)です。
機械で果肉を取り除いた後に、ミューシレージをくっつけたまま乾燥させます。
もともとはブラジルで、ナチュラルの発展形として生まれました。
- 果肉を除去するので、乾燥時間が短くなる
- パルピングの工程で、熟度による選別ができる(弱い力で果肉が剥けるものは完熟豆)
- 大量の水を使わないので、環境負荷が低い
といった特徴があり、生産性・品質ともにメリットがあります。
ハニーという呼び方は、コスタリカ生まれです。
コスタリカはウォッシュドが一般的な国だったのですが、イタリアのilly社が仕入れをする際に、それまで使っていたブラジルの豆と同じ加工を求めたためと言われています。
ここで、「なぜ低品質なブラジルに合わせにゃならんのか」という思いがあったのか何なのか分かりませんが、単にナチュラルへの先祖返りではない、新たな付加価値を表す言い方として「ハニー」という呼称が編み出されました。
確かに味わいとしては、ウォッシュドとナチュラルの中間点というに留まらず、甘味が濃くなるなど独特の傾向があるように思います。
コスタリカではこの加工法が好きになっちゃったのか、ミューシレージの残し具合によって、ブラックハニー/レッドハニー/イエローハニー/ホワイトハニーなど、さらに細かな区分けをするようになりました。
スマトラ式
「マンデリン」で有名なインドネシアのスマトラ島周辺で行われている方法です。
途中まではウォッシュドと同じなのですが、乾燥途中、半乾きの状態で脱穀してしまい、生豆がむき出しの状態で本乾燥させるというものです。
(水分が多い状態では生豆とパーチメントがぴっちりくっついていて剥がれないので、最初から生豆の状態で乾燥というわけにはいきません)
湿度の高いインドネシアで、効率的に乾燥させるために生まれた手法です。
パーチメントに守られない状態で外に放置するため、乾燥過程でカビが発生したり、生豆が割れてしまうというリスクもあります。
しかしマンデリンのスパイシーで野性味あふれる風味は、この乾燥方法によるものだと言われています。
まとめ
以上、4種類の精製方法をご紹介してきました。
最後に、一覧表にして整理してみます。
ざっくりと味の傾向は
- ナチュラル:特徴的
- ウォッシュド:スッキリ
- ハニー:甘い?
- スマトラ式:野性的
ながながと説明してきましたが、ちょっと細かいところまで頭に入れておくと、コーヒーを飲みながら感じる情報量が増えてきて、より豊かにコーヒータイムを楽しめると思います!