こんにちは。主夫です。
今回は、「塩」の話です。
塩って、実は製品ごとにかなり味が違います。
塩辛いもの、甘みのあるもの、苦いもの。
使う塩を変えると、料理の仕上がりもガラッと変わります。これはいろんな塩を試してみるタイプの方は実感されている事だと思います。
で、本記事でちょっと考えてみたいのは、伯方の塩や赤穂の天塩などの「再製加工塩」って、どうなの? という話です。
確認:塩の3分類
話を進める前に、まずはココを確認しておきます。
塩は、その製法によっておおまかに3種類に分けられます。
精製塩
スーパーで売られている、安い食塩がだいたいコレです。
公益財団法人塩事業センターの「食塩」なんか、よく見かけますね。
通常、海水を煮詰めていくと塩化ナトリウム以外にも、カルシウム・カリウム・マグネシウムといったミネラルが残ります。
しかし精製塩は、「イオン膜法」という方法で、ほぼ塩素とナトリウムのみを含む塩水を作りだし、それを煮詰めるという製法を取っています。
これを煮詰める事により、純度の高い「塩化ナトリウム」を取り出す事ができます。成分表示を見れば分かりますが、こういった「食塩」は、99%以上塩化ナトリウムでできています。
この方法は効率よく塩化ナトリウムを取り出す事ができるので、工業用の塩化ナトリウム精製に広く使われていますし、食用としても、安価な塩の供給に一役買っています。
しかし「味」の面で言うと、ビリビリと塩っ辛いだけで、あまり美味しくありません。
また、高血圧など塩分の取り過ぎからくる体の不調も、塩化ナトリウムばっかり摂ってるからいけないのであって、カリウムなど他のミネラルが含まれる塩を食べてれいれば問題ないのだ、という説もあるようです。
天然塩
厳密に言うと「自然塩」「天然塩」といった呼び方の定義はなくて、商品にそういった表示もしないことになっているようなのですが、便宜的にこう呼んでおきます。
海水や湖水から、天日や釜炊きといった方法で水分を蒸発させてつくる塩です。
塩化ナトリウムだけを抽出するわけではないので、カリウム・カルシウム・マグネシウムなどのミネラルを含んだ塩が出来上がります。
原料となる海水・湖水の採取場所や、析出した塩を引き上げるタイミングによって、出来上がりの味が変わります。
(マグネシウムが完全に析出する前に、水溶液から塩を引き上げます。マグネシウムがあまり多く含まれてしまうと、苦くなってしまうので。あとに残ったマグネシウムを多く含む苦い水溶液が「にがり」です)
イオン膜を使うよりも濃縮に手間がかかるので、値段は高いです。
代表的な商品は、「海の精」「宮古島の雪塩」などでしょうか。
再製加工塩
こう書いてしまうと馴染みのない言葉ですが、
「伯方の塩」「赤穂の天塩」、味の素の「瀬戸のほんじお」等が代表的な商品です。
オーストラリアやメキシコ産の天日塩(燃料を使わないので安価)や、イオン膜法で作った塩に対し、にがりを添加するとか、日本の海水に溶かして再度釜炊きするといった製法の塩です。
要するに海水をそのまま煮詰めたわけじゃないけど、ミネラルを含む塩です。
これは今回改めて調べてみて知ったのですが、ひとくちに言っても製法は各社さまざまなんですね。
「伯方の塩」の製法
オーストラリアやメキシコから輸入した天日塩を、日本の海水に溶かし、煮詰める。
「赤穂の天塩」の製法
オーストラリアの塩田で作られた天日塩とにがりを輸入し、本来の日本の塩の成分バランスを参考にし、天日塩ににがりを添加。
「瀬戸のほんじお」の製法
瀬戸内海の海水から、イオン膜を使用して塩とにがりを精製し、できた塩ににがりを添加。
と、各社それぞれの製法があります。
まとめると、本来の天然塩の味を目指しながらも、コストとの兼ね合いも見た製法、と言うことができると思います。
多くの天然塩よりは、価格は安いです。
「伯方の塩」や「瀬戸のほんじお」は私も使ったことがありますが、けっこううまいですよ。
再製加工塩への批判
で、ここからがこの記事で考えてみたい問題になるんですが、
再製加工塩には、下記のような批判が付きまといます。
①.人為的にミネラルを添加しているので、自然本来のミネラルバランスが崩れている。
②.海外産の原料を使っていることや、複雑で人為的な加工工程を経ていることが、霊的、マクロビ的に良くない。
ちょっと②に関しては合理的に検証する方法が分からないのでここでは触れませんが、少なくとも①の批判に関しては、当たってないと思います。
(念のために言っておくと、霊的・マクロビ的な考え方に関しては、私は割と尊重する立場です。スルーするのは、冷静に検証するノウハウを私が持っていないからであって、「どうせウソッパチだから、ハナから取り上げないよ」という態度ではありません)
それでは話を戻して、
「再製加工塩はミネラルバランスが崩れている」という批判はなぜ間違いなのか。それを見ていきましょう。
ミネラルバランスの差を見てみよう
まずは、代表的な自然塩と再製加工塩に含まれるミネラルの量を見てみましょう。
見てみると、「天然塩だからこういうバランス」「再製加工塩だからこういうバランス」という傾向があるわけではなく、あくまで製品ごとに特色がある、という感じですね。
ただ、天然塩のほうがマグネシウム・カルシウム・カリウムの含有量が多い傾向があるとは言えそうです。
また雪塩のマグネシウム含有量が桁違いですが、これは通常の製塩でおこなう「にがりを切る(余分なマグネシウムが析出する前に引き上げて、苦味を抑える)」という工程をあえて行わないことで、海の本来の成分に近づけようとしているためです。
つまり「味」の仕上がりよりも「海の成分そのままである」ことを重視する思想によるもので、だからこれは製法が「優れている」という訳ではなくて、言ってみれば考え方の違いによるものです。
で、これは100gあたりの成分量ですが、1食あたりに直すとどうなるのか。
厚労省の目安によれば、1日あたりの塩分摂取量の目安は成人男性で8g、成人女性で7g。このすべてを塩から摂取する訳ではないということも加味し、ざっくり1食あたり塩は2gと仮定します。
すると、こんな感じ。
下のほうに書いているのは、それぞれの最大値と最小値の差異。
つまり、天然塩と再製加工塩では1食あたりのミネラル摂取量に最大でこれだけの差が出ますよ、という意味です。
※但し、雪塩のマグネシウム値は通常の塩の範疇を逸脱していると思うので、ここでは除外して考えています。又、ナトリウムだけは再製加工塩のほうが摂取量が多くなります。
すなわち、1食あたりの摂取ミネラル量には
ナトリウム:144mg
マグネシウム:12mg
カルシウム:13mg
カリウム:17mg
の差異が出てきます。
で、重要なのは「この差って、大きいの?」ってところです。
ミネラルバランスの差など、みそ汁一杯でチャラになる
上記の差異が、ご飯、みそ汁、肉、魚といった、ごく普通に食べている食品で挽回できてしまうほどの量であれば、そもそも塩のミネラルバランスなど考える必要はない、ということになります。
ここで、われわれ日本人にはなじみ深い、豆腐とワカメのみそ汁に含まれるミネラル量を見てみましょう。
※成分量は文部科学省「日本食品標準成分表2010」を参照しました。
これは、一杯分の量で計算しています。1食でけっこうミネラルが摂れますね。
グラフにすると、こんな感じです。
さあ、このグラフをどう見ますか?
マグネシウムなんかは微妙なラインかもしれませんが、言ってしまえば
塩のミネラルバランスの差など、みそ汁一杯でチャラになると言えると思います。
まとめ
再製加工塩について、「ミネラルバランス的にダメ」という批判は当たっていないと思います。
わたし的には、再製加工塩の使用はアリだと思います。普通においしいし。
ただ、食品はなるべく人為的に手を加えないもののほうがいいとか、自分の国で採れた食品のほうが体に合うといった、マクロビ的、東洋医学的考え方については、私は尊重する立場です。
また、地方の小さな会社が、昔ながらのモノ作りをしているのは素晴らしいことだとも思います。
だから国内の天然塩を積極的に使うのがいいとは思っていますが、ただ再製加工塩に対して過度にネガティブなイメージを持つのも良くない、というのが今のところの結論です。
まあそんなこと言いながら、ウチで使ってるのは伯方の塩です。
うまくてコスパいいし、どこでも売ってるところも良い。