ハワイのコーヒー生産者のグループが、「コナコーヒー」の適切な表記に関する訴えを起こしました。
原告グループによれば、現在「コナコーヒー/コナブレンド」として売られている商品には、実際のところコナ産のコーヒーはわずかしか含んでいないものも多く、それによって「コナ」のブランド価値が既存されているとのこと。
元記事はこちら。
それでは要約と、考察を書きます。
記事要約
2月27日、ワシントンの地裁に、ウォルマート、アマゾン、コストコをはじめとした小売業者・焙煎業者を被告として民事訴訟が起こされた。
訴えを起こしたのは、コナ地方のコーヒー農園主計5名。以下のように主張している。
- 近年では、コナコーヒーの生豆生産量は年間270万ポンド程度なのに対し、2000万ポンドのコーヒーが「コナ」のラベルを付けて売られている
- コナまたはコナブレンドとして市販されているコーヒーのうち19種に、コナ産のコーヒーがわずかしか、または全く含まれていないことが分かった。
- この現状は、コナコーヒーのブランド価値と価格の定価を招く
時を同じくして、ハワイの州議会では以下を定める法案HB144 HD1が審議されている。
- コナ産のコーヒーを51%以上含む商品のみ、「コナ」を名乗ることを許可する(現在の州法では、含有量10%以上でコナを名乗ることができる)
- コナを含むブレンドコーヒーには、ブレンドに含まれる全ての銘柄の産地と、構成比の表記を義務付ける
しかし議会には反対意見も少なくない。ボブ・マクダーモット議員は「ブレンドに51%以上使われていないのは、コナコーヒーが高価だからだ。1ポンドあたり12~14$もする。高いからブレンドにして売るのだ。これは縄張り争いであり、カリフォルニアや日本に輸出する場合には、この法案は意味を持たない。なぜなら彼らがこの法案に従うように強いることはできないからだ」と述べる。
またハワイ食品工業協会は「新法案は、地場コーヒーを広く消費者に届けるのを困難にするものだ。現在のラベルレギュレーションは充分に明確であり、消費者は自分がどんなコーヒーを飲んでいるか分かっている。ブレンドの仕方は自由であり、強制されるべきものではない」と主張している。
現在この法案は、ハワイ州議会の下院を通過し、上院での審議に入っている。
所感
日頃から銘柄を意識してコーヒーを飲み、自分でシングルオリジンのコーヒーを買ったりしていると、「コナブレンド」「ブルーマウンテンブレンド」といった名前の商品は「ちょっと入っている程度だろうな」という見当がつきます。
しかし、世の中の多くの人はそこまで深読みしないだろうし、誰もが身につけるべきリテラシーだとも思いません。
法案で提案されているように、どこ何のものを何%と明確に書くのがいちばんだと思います。
結局のところコーヒー産業の要は農家さんです。
せっかく良いものを作っても、どうせ薄められて使われると分かっていたら、農家さんは誇りを持って仕事ができません。
ブレンドをする流通業者にしても「少ない使用量でコナの風味を最大限引き出す技術」みたいなのがあるのかもしれないが、それはそれで立派な技術です。誇りを持って堂々とオープンにするべきです。
ごまかしごまかし売るよりもサッパリして気分がいいはずです。
とどのつまりコーヒーは嗜好品。腹を満たすためのものではなくて、幸せを生むための飲み物です。
その生産や流通に関わる人々も、いい気分で仕事ができなきゃ意味がありません。
「輸出する場合は実効性がない」という反対意見に関してはどうなんでしょう。確かにハワイ内で販売するコーヒーに限定して規制をしても、たいして意味はないんじゃないかという気もします。
日本だと「〇〇ブレンド」を名乗るためには30%以上使用する必要がある という決まりがあります(下記リンク7ページ目)
レギュラーコーヒーおよびインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約
アメリカではこういう決まりは無いんでしょうか?
ちょっと話はずれますが、日本はオリーブオイルの表記に関しては割と無法地帯っぽいです。
アメリカは歴史的に低品質コーヒーをガブガブ飲んできた国ですし、日本はオリーブオイルを使うようになって日が浅いです。
高品質な製品に親しんできた歴史や文化、そのなかで形成された業界団体などが無いと、適正な表示というのは難しいものなんでしょうか。
であればいっそのこと国が主導で、となるには経済的インパクトも大きくなさそうですし・・・
結局我々のような小さなロースターが「分かっている」お客さん向けに正直な商売をしていくというのが一つの方法なのでしょうが、それだとスーパーでコーヒーを買っているビギナーの消費者が置いてけぼりになるし、、考えれば堂々巡りではあります。