【キン肉マン】 完狩・完傑・主流派 に関する一考察

キン肉マン

「主流派」って何?

完璧超人界には、超人閻魔やラージナンバーズとも方針を異にする「主流派」なる一派と、その意思決定機関である「議会」が存在することが、たびたび語られてきました。

 

初出は単行本41巻、敗北したピークア・ブーに落とし前を付けさせようというネメシスの発言。

ピークよ 完璧超人は”掟”があってこその存在なのだ

その根本原理である”掟”の変革を唱えはじめたネプチューンマンら
主流派の一掃におまえ自身も嬉々として加わっていたではないかーーっ

 

さらに先ほども紹介した、スグルvsネメシス戦前夜の山の中での会話でネプチューンマンが

これでも完璧超人たちの主流派で構成される議会をまとめた上での調印だったのだがな

と語っています。

 

つまり完璧超人内では不可侵条約賛成の立場を取るものが多数派であり、むしろ超人閻魔やラージナンバーズは少数派だったということなんですよね。

 

では、多数派であるはずの「主流派」は、なぜ閻魔派の行動を抑えられなかったのか、先の戦いの最中には何をしていたのか。
そこが疑問です。

ネプチューンマンはなぜ復帰できたのか

で、王位争奪戦直前には処刑対象だったネプチューンマンですが、そのわずか1年半後には、不可侵条約調印式に完璧超人代表として出席するほどの立場に復帰しています。

この華麗なる復活劇の背景には何があったのでしょうか。

 

実は、こういうのは現実の歴史にも例がないわけではありません。

レーニンはシベリア流刑からの復帰後、革命のリーダーとなりましたし、孫文も日本への亡命後、革命の指導者の一人として復帰しています。

 

つまり、現体制の敵は、容易に反体制派の指導者になり得るのですね。

すなわち完璧超人の主流派は、ネプチューンマン復帰以前から「反体制派」だったのです。

 

閻魔派から煙たがられているネプチューンマンの復帰は、逆に主流派からは歓迎されたとすら想像できます。

一般完璧超人で最古参クラスのネプチューン・キングの愛弟子であり、自身もラージナンバーズに名を連ねる実力者。さらに正義超人のリーダー格であるキン肉スグル大王やロビンマスクと個人的親交のあるネプチューンマンは、改革派の旗頭としてはもってこいの器です。

 

 

では、現体制に不満を持つ「主流派」という一大派閥は、そもそもどうやって形成されたのでしょうか?

私は、その背景にはネプチューン・キングがいると見ています。

 

ネプチューン・キングの追放理由

ネプチューン・キングも、かつては「完傑」の二つ名でラージナンバーズに名を連ねる幹部でした。

さらには「グリムリパー」ではなくサイコマンから直接指導を受けていたこともあり、グリムリパーの正体を知らなかった若手のラージナンバーズとは一線を画す古株です。

そんな彼が、なぜ幹部の座から追われることになってしまったのでしょうか?

 

サイコマンはネプチューン・キングからラージナンバーズの資格を剥奪した理由について「どうも調子に乗ってしまいましてねぇ」という、非常にぼやかした言い方しかしていません。

サイコマンからみて「調子に乗っている」ように見えた行為とは、いったい何でしょうか。

 

 

私はネプチューン・キングの追放のきっかけはズバリ「独自の人材採用」だと考えます。

 

従来、完璧超人の採用は、もっぱらミラージュマンの面接によっていました。

しかし、それこそ数億年ものあいだ変わらぬ採用基準で人材を招き入れた結果、完璧超人界には変革を起こすことのできない右にならえの人材ばかりが溢れ、時代の変化に適応することが困難になりつつあるように、ネプチューン・キングには思えたのです。

また、失敗すれば腹に穴を開けて殺されるミラージュマン方式では、すでに完成された強さを持つ超人しか採用できません。
それでは、これから育つ可能性のある超人の芽を摘んでしまいますし、墓場内から人材育成のノウハウも失われてしまいます。

 

そこで彼は、独自に外界にスカウト活動に出かけ、有望な人材を自分の「弟子」として育成し始めました。
(本来、立場の上下がないはずの完璧超人において、キング周辺でだけ「弟子」とか「手下」という言い方がされてるのも独特ですよね)

キング自身の発言によれば弟子の数は1000人にのぼるとのことなので、その質はともかく、少なくとも数のうえではこの事業は成功していたと見て良いでしょう。
なかでもテムズ川でスカウトしたネプチューンマンはラージナンバーズ入りするほどの実力者に育ちました。

 

実は「主流派」というのは、ネプチューン・キングによって採用された完璧超人たちだったのではないでしょうか。

なんと言っても1000人ですから、議会に出れば始祖やラージナンバーズを差し置いて、このキング一派が数の力で「主流派」になるのは目に見ています。

 

その割にはしょせんキングの手下ですから、キングと同格のラージナンバーズや、ミラージュマン採用組からは軽んじられるのももっともです。

 

ネプチューン・キングにしてみれば、ラージナンバーズでさえ飼いならされた若造が顔を並べる今の状況、古株でありサイコマンからの信頼も厚い自分が動かなければ誰がやるという気持ちだったのかもしれません。

しかし、始祖ミラージュマンの専権事項であった人材採用に勝手に手を出すのは立場をわきまえない越権行為であり、それこそサイコマンから見れば「調子に乗っている」ように見えるのも無理はありません。

結果として、これが原因で彼は、ラージナンバーズから追放されてしまったのです。

ネプチューン・キングはなぜ下界に殴り込みを掛けた?

ラージナンバーズからは身を引いたネプチューン・キングですが、じつはそれほど悪い立場にはなっていなかったと思われます。

なぜなら一般完璧超人の議会では相変わらず圧倒的多数派を支配しているし、一方でラージナンバーズにも愛弟子であるネプチューンマンが名を連ね、一定の発言力を持っています。

始祖とラージナンバーズ合わせて20人かそこらの部下しか持たない超人閻魔なんかと比べても、よっぽど政治的権力は持っていたかもしれません。

 

しかしそのネプチューン・キングでも、決して抗えないものがありました。

それが「老い」です。

 

ラージナンバーズを抜けたキングは、超人閻魔から与えられた不老不死の力も失い、日に日に死期が迫ることに焦りを感じていました。

 

彼の一派は、いくら数が多いとは言えども、現時点では実績もなく、烏合の衆に過ぎません。
恩人であり指導者であるネプチューン・キングが死んでしまった後は、いつ閻魔派から潰されるか、あるいは後継のネプチューンマンの求心力が足りずに空中分解してしまうか、分かったものではありません。

キングとしては何としても生きているあいだに結果を出す必要がありましたし、何より、自分がやってきたことが正しかったのか、確かめたかった。

品格と強さを兼ね備えた自分の弟子たちで下界を統治し、墓場に籠もって前に進まない閻魔派に、自分が追い求めた理想を見せつけてやる。

そんな思いが、彼をタッグトーナメントへの参戦という行為へと向かわせたのです。

 

ネプチューンマンはこのときまではラージナンバーズとしての道を踏み外さずに来たわけですが、恩人であり師匠であるキングの人生を賭けた大勝負にあたり、完璧超人としての立場を捨てる覚悟で、パートナーとして名乗りを挙げたのではないでしょうか。

 

その後

ネプチューン・キングの一挙は失敗に終わり、ネプチューンマンも墓場に帰ることができず放浪の身となりました。

 

指導者を失ったキング一派の発言権は低下し、閻魔派はこれを機に「主流派の一掃」を試みます。

練習試合の形式を借りて実質的にディクシアがアモイマンを粛清した一戦などは、その手始めだったと考えられます。

 

危機を感じた主流派はネプチューンマンを代表として呼び戻し、不可侵条約へ調印することで「自分たちが代表権を持つ意思決定機関である」という事実を対外的に示そうとしました。

しかしこれが閻魔派の暴走を招き、ネプチューンマンは投獄、正義・悪魔超人軍との全面戦争に突入するという結果を招いてしまいます。

ところがその結果、始祖やラージナンバーズは大きく数を減らし、さらに超人閻魔本人やネメシス、ピークア・ブーといった強硬派が軒並み丸くなって帰ってくるということで結果オーライ。

 

結局現在の完璧超人軍は、ゆっくりと着実に改革を進めつつある超人閻魔、ネメシス、ネプチューンマン、ピークア・ブーというトップ層のもとで足並みが揃っています。
さらにネメシスは火事場のクソ力を持ち帰ってきており、それを伝播させることによって飛躍的な戦力向上も期待できる、非常に今後が楽しみな状況です。

ネプチューン・キングが目指した改革は、大きな紆余曲折を経て今、ゆっくりと芽吹こうとしているのかもしれません。

 

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