英国サリー大学の研究チームが、コーヒーの水洗処理の際に出る廃水から電気を作る「微生物燃料電池」を開発しました。
ソース記事はこちら。
以下、記事の要約と補足を書いていきます。
はじめに:コーヒーの廃水とは
まずは補足から。
コーヒーの果実から「コーヒー豆」を取り出す方法には、大きく分けて「水洗(ウォッシュド)」と「非水洗(ナチュラル)」の2種類があります。
今回問題にされているのは、「ウォッシュド」処理をする際に発生する廃水です。
コーヒーの実は、
- 果肉
- ミューシレージ(粘液質)
- パーチメント(内果皮)
- コーヒー豆
という構造になっています。
まずは機械で果肉を剥く(パルピング)のですが、種子周りのぬるぬるとしたミューシレージは、機械では剥がれません。
そこで「発酵槽」と呼ばれるプールに漬け込み、ミューシレージを溶かした後、洗い流します。これが「水洗」であり、ここで廃水が発生します。
コーヒー産地では、この廃水の処理施設を持たず、そのまま水路に流してしまう加工場も多いようで、河川の汚染が問題視されています。
「そんな問題があるのなら、全部ナチュラルでやれば良い」と思われるかもしれませんが、概してウォッシュドコーヒーの方が欠点豆を効果的に取り除けるために、高品質・高価格なロットが生産できます。また、ナチュラルは果肉ごと乾燥させる必要があるため乾燥期間が長く、湿度が高かったり、雨の降る地域では難しいという面もあります。
コーヒー廃水から電気を作る
ようやく本題に入ります。
英国サリー大学の、Claudio Avignone Rossa博士のチームが、この汚水を分解し、エネルギーを生む微生物を発見しました。
さらに同チームはこの仕組みを、小規模農家が導入できる、数百円の小型デバイスにして提供しようと考えています。現在は研究室でプロトタイプを作っているところ。
コロンビアの農業組合がすでに導入に関心を示しているそうです。
英語ですが、博士が研究室で装置を触りながら話している動画がありました。英国BBSRCの取材ビデオです。
所感・類似技術
ウォッシュドの廃水がなんとなく環境に悪いということは知っていたのですが、あまりよく分かっていませんでした。
というか具体的にどう悪いのかという日本語情報があまりネット上に転がっていないので、そこは引き続き調べて記事にしてみたいです。
コロンビアは世界3位のコーヒー生産国ですが、1位のブラジル、2位のベトナムはナチュラルがメインの国なので、実質いちばんデカイ所から狙いに行っている感じですね。
いずれは小規模農家の多い他の国にも導入を広げることや、長期的に見て気候変動でコーヒー産地が移動していく可能性などを考えたら、「小型のデバイスでやる」という切り口は非常に良いと思います。
似たような技術として、こんな記事も見つけました。
こちらは廃水から発生する「メタンガス」を発電に使おうというものです。
このメタンガスの記事自体は2014年のものなのですが、続報は発見できていません。合わせてウォッチしていきたいです。