YMOはファーストの方が名盤だと思う。

こんにちは。
YMOで最も好きな曲は「マッド・ピエロ」な、ゆとりです。

YMOといえば、「ライディーン」「テクノポリス」といった有名曲を収録したセカンドアルバム「ソリッド・ステイト・サバイバー」が一番の人気作と位置付けられていますが、私は圧倒的にファーストの方が好きです。

この記事では、YMOのファーストアルバムの魅力について、どっぷり語ります。

YMOのファーストの、スゴいところ

東洋っぽさがスゴい

セカンドは、冒頭の「TOKIO」の掛け声に象徴されるように、「東京」っぽい作品です。
夜になっても灯りは消えず、車のヘッドライトが猛スピードで行き交う。人々の意識もディスプレイ越しに、記号となって光の速さで行き交う。そんな「電脳都市」のイメージさながらの、人工的な空気感を持った作品です。

それにたいしてファーストは、なんというか「東洋」です。

おそらくはトロピカル・ダンディな細野氏のカリスマに対し、坂本氏、幸宏氏がまだ個性を発揮しきれていないのも一因なのでしょう。

色とりどりの自然、むきだしの大地、燦々と輝く太陽に焼かれた、蒸し暑い空気、雄大な山々、悠久の時間・・・
そんな豊かなイメージがゴボゴボと湧き出してくるような感覚は、以降のYMO作品には無い、本作特有のものです。

その一方で、いい大人が喫茶店のインベーダー・ゲームでハシャいでいるような情景がチラチラ挿入されてくるギャップがまた、おちゃめでイケてます。

有機と無機の共存感がスゴい

次作以降ではテクノポップというコンセプトを確立し、しっかり統率された人工的な音作りになっているのに対し、ファーストはやはり過渡期なのか、音に有機的な手触りが混じっています。

「ファイヤークラッカー」や「シムーン」なんかには、色とりどりの熱帯の花咲く景色が見えるし、「東風」が想像させるのは、湿り気を帯びた熱風です。「中国女」は、チャイナタウンのけばけばしいネオンの光と同時に、濃厚な油の匂いを感じさせます。

また、YMOの曲は誰が演奏しても同じになるように作っている、とは本人たちの弁ですが、ファーストはその度合いも低いように思われます。

「東風」での細野氏のベースラインなんかは、かなり個性が出てますしファースト発表後の米国ツアーの映像なんか見ると、幸宏氏を筆頭に各人の名プレイヤーぶりが堪能できます。

そんなところで、ファーストでYMOとして目指していた方向性は完全には実現されていない、と言っていいでしょう。

でもそれは全く残念なことではないのです。むしろ絶妙なバランスの、貴重な一瞬が、ここには残っているのです。

捨て曲が無いのがスゴい:全曲解説

ファミコン音源の切り貼りのような小品もいくつか含まれる本作ですが、それらも含めて、全部いい曲です。と、口で言うだけなら簡単で信用されないと思うので、全曲感想を書いていきますよ。

特におすすめの曲は、「シムーン」「東風」「マッド・ピエロ」です。
試しにこの3曲だけでも、聴いてみて頂ければ嬉しいです。

1.コンピューター・ゲーム(サーカスのテーマ)

「サーカス」なるアーケードゲームの音をいい感じのリズム感でコラージュした曲。
途中から入るドラムの音が気持ちよく、爆竹の音で次曲につなぐ、楽しいイントロ曲です。

2.ファイアークラッカー

マーティン・デニーのカバー。YMOの曲としてはトロピカルな色合いが強いです。
しかし、原曲よりもあえて抑制されたグルーブ、硬質な電子音など、YMOとして向いている方向性も端的に表している、名刺代わりにこれ以上ない1曲です。

3.シムーン

アジアのリゾートで日がな一日ぼんやりと過ごしているかのような、のんびりとした曲。
退屈なようでいて、よく聴くとズシンズシンと図太いシンセベースの音や、ノイズでメロディを奏でる中間部など、遊び心に溢れてます。

4.コズミック・サーフィン

一転して宇宙っぽい曲。インベーダー・ゲームからイメージを膨らませたんでしょうか。
ライブだとテンポが速くて景気のいい演奏で、それはそれでカッコイイんですが、ここではゆったりと宇宙遊泳を楽しみ、星のきらめきを眺めているような、茫洋とした余裕感があります。

5.コンピューター・ゲーム(インベーダーのテーマ)

冒頭の曲の別バージョンというか、サーカスの音は後ろの方で鳴っていて、インベーダーゲームの銃撃の音が前面に出てきています。
これだけでどことなく不穏な印象になり、のんびりとしたA面からシリアスなB面へと、一気に雰囲気が変わります。

6.東風

坂本氏の作。このアルバムのハイライトです。
「いいメロディとはこういうこと」とでも言いたげな、屈指の説得力を持ったメインメロディ。

人気曲「ライディーン」と比べると、ゆったり、どっしりと構えていてシルクロードか揚子江のような、雄大さがあります。

7.中国女

フランス語の女性ボイスによる色っぽい語り、フーマンチューな幸宏氏の歌、ミニマルで軽やかなメロディライン。まさに中国らしい「雑多さ」が愉快な曲。

8.ブリッジ・オーバー・トラブルド・ミュージック

「中国女」のアウトロから続く、鼓動のようなリズムパターン、そこから、曇り空を割って光が射すようなファンファーレ。
シンプルだけどイメージ豊かな間奏曲。

9.マッド・ピエロ

細野氏の気持ち悪いくらいの鬼才っぷりが発揮された、謎の曲。
一聴してめちゃくちゃかっこいい曲。なんだけれども、
このメロディもこのメロディも良い!
歌もかっこいい!
でも曲としての中心はどこなの?
という、捉えどころのない、不思議な感触を持った曲。

で、同じ捉えどころのない一連の流れをもう一回繰り返し、一番(?)と二番(?)の歌詞もまったく同じ。
結局、正体がつかめないまま最後まで行ってしまう感じ。

実際キャッチーなんだけど、ライブでも演奏されない、ボーカルも誰が歌っているのか分からない、謎が多い曲。

10.アクロバット

マッド・ピエロのリズムパターンを引き継ぎながら「サーカス」の死亡時のテーマである葬送行進曲を延々コラージュするという、「オチ」のような曲。

しかしかわいらしいメインメロディもついていて、実際「オチ」にしては隙がない、クオリティの高い曲。

まとめ

以上、YMOファーストの魅力と、全曲解説でした。
どうですか、聴いてみたくなりましたか?

ジャケットがかっこいい米国版も存在していますが、まずは日本版を聴いてください。なぜなら米国版は「アクロバット」がカットされているから。

「アクロバット」の無いこのアルバムなんて考えられません。デザートのないフルコースみたいなものです。仏作って魂入れずとはこの事です。

ちなみに余計なことを言うようですが、セカンドの「キャスタリア」「インソムニア」は捨て曲だと思います(笑)
それではさよなら!

 

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